2012年2月1日水曜日

神鋼電機(現シンフォニアテクノロジー株式会社)製のプリンターの不具合を直す の巻き


今回はパソコンでなく写真プリンター(の修理の)ハナシです。

SHINKO(神鋼)というメーカーが、昇華型大判プリンター「CHC-S845-5C」を
出していたのはもう10年以上前。
こういう機械ですね↓(分解途中の筐体写真しかないですが・・・)

当時はコニカ製フォトキレートプリンターも販売されており、共に昇華プリンターの黎明期でした。
昇華型と言えば当時としてはプロ業界では異端視・軽視・無視されていたプリント方式でしたが(今でも?)、ラミネート不要(機械側で自動付与)などの利点もあり、銀塩などとの違いに苦労させられつつも、当社は営業写真館向けに結構な台数を販売させてもらいました。


このプリンターの販売時、当社からの用途提案は以下のようなものでした。
(営業写真館向け)

・遺影写真(屋内でずっと飾る大判の肖像タイプ)
・自家内製のフォトアルバム
・その応用として、小規模学校や幼稚園の卒業アルバム紙面出力用
(その後、製本作業は自店で糊貼りして加工)

といったものでした。
スタジオ撮影のポートレート出力は銀塩機やプロラボに任せ
(当時はフィルム時代だったから当然)、このプリンターの用途は
それではまかないきれない部分や、即時性が必要な分野(葬儀用など)
に限って写真館に提案・導入していただきました。

ラミネート(オーバーコート)自動付与のプリンターでしたから、プリント面同士が
貼り付きにくく、写真プリンターなので印刷より紙面の品質が当然断然良く、
今でいうフォトブック製作にもってこいでした。色あせにも強かったので当時
プリントした遺影写真はまだ健在との話もよく聞きます。
このあたり、ピクトログラフィーとは大違いでした。

ということで、この「CHC-S845-5C」、出力サイズによって機種ラインアップが
いろいろありましたが、ウチでは上記用途でオススメしたいとの観点から、
A3ノビ出力できる最大サイズ機を中心に販売しておりました。

ま、その後いろいろあって現在ではSHINKO製もコニカ製もどちらも消耗材
(ペーパーとインクシート)が供給停止になってしまいました。

停止になってからもう早2年になりますかね・・・。

消耗材のないプリンターはガソリンの無い車のようなもの。重しくらいにしか
なりません。というわけで、この「CHC-S845-5C」、購入してくれたお店には
ペーパー・インクシートが消滅する直前、消耗品の大量確保をお願いしていました。

ところが世の中上手くいかないもので、消耗材を確保したとたん、プリンター
本体の動作不良が多く寄せられるようになってしまいました。
動作不良とは、主にペーパーがうまくプリンター内に取り込まれず、給紙不良に
なってプリントできない、というもの。
メーカー側ではその時点でメンテナンスもフォローも終了しており、いくら修理を
泣きついても冷たく突き放され、のれんに腕押し状態でした。

これは販売者の当社が何とかするしかない・・・
ということでいろいろ試行錯誤を繰り返しました。
機械をバラしたり、不具合箇所を探してはまた組みなおしたり・・・
一時は毎日やってました。
こうなるとイチ販社を超えて機械屋さんですね。
その甲斐あってか、やっと直す方法を見つけました。

ということで、CHC-S845-5Cの最もポピュラーなトラブル、
給紙不良の修理方法を写真で紹介します。

案外かんたんに修理出来ますが、大きな問題がひとつ。

このトラブルの修理には同型機のパーツ(ステッピングモーター)
との交換が必要です。

ということはある程度動作の大丈夫な同型機が必要だということに
なってしまいます。
ステッピングモータがパーツ単体で手に入れば最高なのですが、
世の中に広く普及したプリンターでもなく、また、該当機は汎用規格の
ステッピングモーターを使っている訳でもないので
(機種固有の専用モーターらしい)、単体別途購入は難しいでしょう。

修理に際してはこの同型機調達が大きなハードルです。

唯一の救いは同型機であればプリントサイズが違う筐体のものでも
流用可能だということです。
ヤフーオークションなどでこのプリンターシリーズが気長に
出品されるのを待つくらいしか、残念ながら対応できない
現実があります。部品取り用のジャンクまがい品で構わないんですが。
(ただ当然、ステッピングモータの健全動作は必須)

それを踏まえたうえで、下記に修理方法を紹介します。





まず上部のふた(インクシート交換の
時に開ける部分)を開け、機械に
向かって右側面2箇所のネジを
プラスドライバーで外します。








プリンター前面にも隠された
ネジがあるので、前面カバー
を押し上げながらネジを外します





右側面のカバーを完全に
外した状態。








ステッピングモータを外す作業
に取り掛かります。画面中央に
見える丸い小さいパーツが
ステッピングモーターです。





ステッピングモータ拡大写真。
モーターから出ている青い
コードが電源コードなので、
まずは白いプラグを外して
おきます。




ステッピングモーターの軸中央
にある、小さなノッチをマイナス
ドライバーなどで押し下げつつ、
モーターを引き抜く。


  



この千枚通しの先端あたりに
ノッチがあるので押し下げつつ
モーターを手前に引っ張る。




 

ステッピングモータが
外れたところ。







 外したステッピングモーター。






あとは、部品取り用同型機のステッピングモーターも同じ要領で外し、
外す手順の逆でそのモーターを修理機に取り付けてください。
取り付けといっても外す時と違って今度はノッチをゴジゴジやる必要は
なく、ステッピングモータを軸に差すだけですが。

最後に白い電源ミニプラグを差し戻しておくことも忘れずに。
プリンターの側面板を戻して修理終了です。
これで元通り動作するはずです。

このモーターは小さいんですが重要な役割を担っており、紙の給配に
大きな影響を与えるパーツです。
ここが動作不良になると紙をうまく機械に引き込めません。
しかも大きな負荷がかかるらしく、とっても壊れやすい部品のようです。
ここが弱いのはシート給紙タイプのプリンターの宿命といっても
いいのかもしれません。

というわけで、同じ症状にお悩みの方、この修繕方法、
試してみてはいかがでしょうか。
(くどいようですが同型機、いや少なくともこのステッピングモーター
の完動品が必要になりますが・・・)

いまは昇華型も進歩し(A3ノビのような大判は出力できませんが)、
DNPフォトルシオ社製「DS40」「DS80」という、優秀な昇華型プリンターがあり、
プロ用途に好評です。
操作性も堅牢性も大幅に向上し、消耗品もすぐにやめるとかの気配もないので
安心です。

当社で扱ってますのでご興味ある方はお気軽にお問合せ下さい。
以上、最後は宣伝でした~。